「アスペクトは理解できてきたけど、“オーブ”って何?」
「何度までをアスペクトとして読むのが正解なの?」
「タイトとかルーズって、どういうこと?」
――そんな疑問に、やさしく・しっかりお答えします。
この記事を読み終える頃には、オーブが“何を意味するものなのか”、そして“なぜアスペクトを読むうえで欠かせない要素なのか”を、しっかり理解できるはずです。
西洋占星術における“オーブ”とは、
天体同士がアスペクトとして影響し合う角度の「許容範囲」のことです。
アスペクトは、実際の天体はピタリと角度が一致することはほとんどなく、少しズレた位置にあっても、その“幅”の中で互いに作用し合っています。
このオーブを理解することで、「ある/なし」という白黒の判断ではなく、角度の近さによって強さや現れ方が変化する“ニュアンス”としてとらえることができます。
この記事を読むとわかること
- オーブの本来の意味と役割
- 「ある・なし」では語れないグラデーションの読み方
- タイトとルーズの違いと影響
- 接近・分離によるニュアンスの変化
- 自分のホロスコープでオーブを読む実践ステップ
オーブとは ― アスペクトの「グラデーション」を描くもの

実際のチャートでは、天体がピッタリアスペクト角度に重なることは、ほとんどありません。
たとえば180°ちょうどのオポジションで向かい合う瞬間は、実はとても限られています。
チャートを見てみると、178°や183°のように、少し角度がずれていることのほうが多いんです。
これは天体が常に動いているから。
ネイタルチャート(出生図)のように「生まれた瞬間」を切り取るときも、
トランジットのように「今この瞬間」を読むときも、
ぴったりになるタイミングはごく一瞬で、その前後にもゆるやかに影響が広がっています。
この「ぴったりから少し広がる範囲」――それを示す考え方がオーブです。
その“少しのずれ”を、どこまでアスペクトとして読むのか――
その「幅」を示すのが オーブ です。
たとえば、オポジションのオーブを±8°とるなら、
172°〜188°の範囲にある天体同士も「オポジション」として解釈できます。
ここで大切なのは、「ぴったりかどうか」を白黒で判断することではありません。
0°に近いほど響きが濃く、そこから少しずつ淡くなっていく――
まるで、水彩絵の具が紙の上でじわりと広がっていくようなイメージです。
オーブは、この“グラデーション”の境界をとらえるための考え方。
「ある・ない」を決める線ではなく、どんな濃さでそこに響いているのかを感じ取るためのツールなのです。
オーブの目安 ― “線”ではなく“濃淡”を感じ取る
以下は、オーブを「一律のルール」としてではなく、“濃淡の目安”として柔らかく扱うことを前提に整理した表です。
特に太陽・月・ASC・MCといった「強い発信源」を含むアスペクトと、その他の天体との違いをわかりやすく示しています。
太陽・月・ASC・MCが関わるアスペクト
| アスペクト | 目安のオーブ |
|---|---|
| コンジャンクション(0°) | ±8〜10° |
| オポジション(180°) | ±8° |
| トライン(120°) | ±6° |
| スクエア(90°) | ±6° |
| セクスタイル(60°) | ±4° |
| マイナーアスペクト | ±2〜3° |
それ以外の天体同士(個人天体・外惑星など)
| アスペクト | 目安のオーブ |
|---|---|
| コンジャンクション(0°) | ±6〜8° |
| オポジション(180°) | ±6° |
| トライン(120°) | ±4〜5° |
| スクエア(90°) | ±4〜5° |
| セクスタイル(60°) | ±3〜4° |
| マイナーアスペクト | ±1〜2° |
- オーブは「境界線」ではなく「目安となる濃淡」です。
→ 「ここからは効かない」という線引きではなく、「このあたりから輪郭が淡くなっていく」という感覚を持つのがポイントです。 - どこまでを採用するかは 占星術家によって考え方が異なります。
オーブを広めにとる人もいれば、タイトな角度に絞る人もいます。
これは「正解・不正解」の話ではなく、「どんな読み方をベースにするか」というスタイルの違いです。 - 自分自身のチャートを読むなかで、「どのくらいの範囲をしっくり感じるか」を観察していくと、自然と“自分のオーブ感覚”が育っていきます。
タイトとルーズの違い ― オーブがアスペクトの強さに与える影響

アスペクトを読むときに大切なのが、
「タイト(狭いオーブ)」と「ルーズ(広いオーブ)」 という考え方です。
最初から完璧に理解する必要はありませんが、この違いを理解することで、アスペクトがどのくらい明確に意識されやすいか、行動や性格にどう影響するかが見えてきます。
タイトなアスペクトは、本人の性格・言動・思考の中ではっきりと自覚されやすく、日常的にも自然に表に現れる傾向があります。
テーマが明確で、本人も意識しやすい特徴として根付いているケースが多いです。
一方、ルーズなアスペクトは、同じテーマを持っていても、普段は意識にのぼりにくく、背景的な傾向として静かに作用し続けます。
ただし、それが「影響がない」という意味ではありません。
本人の考え方や行動の“土台”として、無意識的にじわじわと影響を及ぼしていることも少なくありません。
| タイト or ルーズ | オーブの目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| タイト(狭い) | 0〜3° | テーマが明確で意識されやすく、行動・性格に強く反映されやすい |
| ルーズ(広い) | 4°以上 | 無意識的・背景的に作用し、状況や経験を通して浮かび上がることがある |
たとえば、太陽と木星がタイトなトラインを組んでいる人は、
生き方そのものが明るく伸びやかで、周囲にもその雰囲気が自然と伝わりやすいタイプです。
一方で、太陽と木星のトラインがルーズな場合、そのテーマはふだん意識されにくいかもしれません。
しかし人生の方向転換やチャンスのタイミングで、自然とその楽観性が前に出てくることがあります。
つまり、タイトかルーズかによって「性質があるかないか」ではなく、「どれくらい意識されやすいか」 が違うのです。
オーブは強弱を決めるための線引きではなく、アスペクトのテーマが どれほど日常的・自覚的に表れやすいか を測るための、実践的な目安です。
【中級編】接近と分離 ― 時間のグラデーションを添える
オーブの理解をさらに深めていくと、同じ角度のアスペクトでも「いつ響くのか」によって印象が変わることが見えてきます。
その鍵になるのが 接近(アプリケーション) と 分離(セパレーション) です。
こちらの考え方も、最初から完璧に覚える必要はありません。
読みながら少しずつ“感覚”を育てていけば大丈夫です。
- 接近(アプリケーション):速い天体が遅い天体に近づき、アスペクトが0度へ向かう段階。
- 分離(セパレーション):ピッタリ0度の状態から、徐々に離れていく段階
接近中のアスペクトは、これから人生のなかでそのテーマが 育っていく途中。
まだ“染まりきっていない”からこそ、変化や成長のエネルギーを強く感じやすいタイミングです。
一方、分離中のアスペクトは、そのテーマがすでに 自分の一部になっている 状態。
ピークの強さは少し落ち着き、やさしく背景に溶け込むように作用します。
これはちょうど、絵の具が筆先からにじみはじめる瞬間と、少しずつ紙に染み込み、広がっていく様子のようなもの。
時間とともに色の濃さが移り変わるのです。
この考え方はネイタルチャート(出生図)でももちろん使われますが、とくに 未来予測(トランジットやプログレス) を読むときに、より意識されやすい視点です。
「いつピークを迎えるか」や「どのくらい余韻が続くか」を読み取ることで、出来事のタイミングやテーマの“育ち方”をより立体的にとらえられるようになります。
実践 ― 自分のチャートでオーブを読んでみよう

オーブは、アスペクトを「ある/なし」で線引きするためのものではなく、
そのテーマがどれくらい意識されやすいかを読み取るための目安です。
初心者のうちは、細かい度数の違いや複雑な技法を意識するよりも、まずは「タイトかルーズか」という2つの基準だけで十分です。
STEP 1:主要感受点(太陽・月・ASC・MC)から見る
まず注目したいのは、ホロスコープの中でもとくに影響が強く現れやすい太陽・月・ASC・MCです。
これらはチャート全体の軸となる感受点であり、多くの占星術家が重要視しています。
はじめの段階では、この4点と他の天体とのアスペクトに絞ってオーブを確認していくと、全体像がとらえやすくなります。
STEP 2:オーブの広さで「意識されやすさ」を判断する
オーブは、角度がどれだけぴったりに近いかを示します。
度数が近いほど、そのアスペクトは日常生活や性格の中で自覚しやすくなります。
| オーブ | 意識されやすさ | 特徴 |
|---|---|---|
| タイト(0〜3°) | はっきりと意識されやすく、行動や性格に強く現れやすい | テーマが明確に出る |
| ルーズ(4°以上) | 普段は意識に上りにくいが、背景で静かに作用する | 潜在的な傾向として現れる |
「タイトだから強く、ルーズだから弱い」という単純な話ではなく、
タイトは「意識されやすいテーマ」、ルーズは「無意識的な傾向」として読むのがポイントです。
STEP 3:チャート全体の傾向をつかむ
オーブを個別に見ることに慣れたら、次はチャート全体の傾向を確認します。
- タイトが多い → 自覚しやすい性格・傾向が多く、人生の軸が明確になりやすい
- ルーズが多い → 潜在的なテーマが多く、環境や成長とともに自然と浮かび上がる性質を持つ
このようにチャート全体のオーブ分布を把握すると、その人の「人生の主旋律」が見えやすくなります。
次のステップ ― 少しずつ読みの幅を広げていく
オーブは「当たる・当たらない」を判断するための線ではなく、どれくらい自分の中でそのテーマを感じ取りやすいかを知るための目安です。
- まずは太陽・月・ASC・MCといった、チャートの軸になるポイントから読み始める
- タイトとルーズ、この2つの違いだけでもチャートの輪郭が見えてきます。
- タイトが多い人は、自覚しやすい傾向がはっきりし、ルーズが多い人は、時間をかけて自然と育っていくテーマを多く持つタイプ
慣れてきたら、主要な感受点以外にも視野を広げてみましょう。
土星・天王星・冥王星といった外惑星や、マイナーアスペクトのオーブも見ていくと、これまで見えていなかったテーマや背景が浮かび上がり、チャートの読みがより深く、立体的になっていきます。
まとめ ― オーブを理解することは「チャートを立体的に読む」こと
西洋占星術におけるオーブは、アスペクトを「ある・なし」で線引きするためのものではなく、
そのテーマが どれくらい前面に現れやすいか/背景に溶け込みやすいか を読み取るための大切な目安です。
ぴったり0°だけが特別なのではなく、角度によってテーマのあらわれ方には濃淡があります。
その“グラデーション”を感じ取ることで、チャートの読みはぐっと深まっていきます。
タイトなアスペクトは、人生の中で自然と意識されやすく、明確なテーマとして立ち上がるもの。
一方、ルーズなアスペクトは、日常生活の中で意識しづらいが、長期的に影響しているテーマです。
オーブを理解するということは、
アスペクトを「点」でとらえるのではなく、「色と奥行きのある世界」として見るということです。
これは、チャートをより柔らかく、そして立体的に読み解くための大きな一歩になります。
たとえ今はタイトとルーズの違いがピンとこなくても大丈夫。
オーブは、経験を重ねるほど感覚的にわかってくる領域です。
数字ではなく“グラデーション”としてチャートを見つめる時間は、自分自身の内側を深く理解する入り口となります。